企画業務型裁量労働制は、労働者が自らの裁量で業務を遂行し、労働時間ではなく成果に基づいて評価される労働時間制度です。主に戦略的な思考や企画立案を要する業務に適用されることが多く、従来の時間に縛られる労働形態から脱却し、柔軟な働き方を実現することを目的としています。この記事では企画業務型裁量労働制を導入したい企業の導入手続きから正しい運用方法、注意点などをしっかり解説致します。
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企画業務型裁量労働制の導入の条件
企画業務型裁量労働制は、誰でも簡単に導入できるわけではありません。
以下に掲げる要件を満たした企業が導入可能となります。
1.対象事業場
企画業務型裁量労働制を導入できる事業場は、次のいずれかに該当する事業場のみです。
- 本社・本店である事業場
- 1.のほか、次のいずれかである事業場
- 事業場の属する企業等に係る事業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行なわれる事業場
- 本社・本店である事業場の具体的な指示を受けることなく独自に、当該事業場にかかわる事業の運営に大きな影響を及ぼす事業計画や営業計画の決定を行っている支社・支店等である事業場
2.業務の内容
・業務が所属する事業場の事業の運営に関するものである
・企画・立案・調査・分析の業務である
・業務遂行の方法を大幅に労働者に委ねる必要があると判断される性質である
・相互に関連し合う作業方法について広範な裁量が労働者に認められていること
対象業務となり得る例・ならない例
対象の業務となる範囲はかなり狭まれています。例えば単なる事務作業を行う従業員は対象外になるイメージです。具体的には、以下に記載します。
1.対象業務となり得る例
① 経営企画を担当する部署における業務のうち、経営状態・経営環境等について調査及び分析を行い、軽営に関する計画を策定する素務
経営企画を担当する部署における楽務のうち、現行の社内組織の問題点やその在り方等について調産及び分析を行い、新たな社内組織を福成する業務
③ 人事・労使を担当する部署における業務のうち、現行の人事制度の問題点やその在り方等について調査及び分析を行い、新たな人事制度を策定する業務
④ 人事・労便を担当する部署における業務のうち、業務の内容やその送行のために必要とされる能力等について調査及び分析を行い、社員の教育・研修計画を策定する業務
⑤ 財務・経理を担当する部署における業務のうち、財務状態等について調産及び分析を行い、財務に関する計画を策定する業務
⑥ 広報を担当する部署における業務のうち、効果的な広報手法等について調査及び分析を行い、広報を企画・立楽する業務
⑦ 営業に関する企画を担当する部署における楽
務のうち、営楽成績や営業活動上の問題点等について調を及び分析を行い、企業全体の営業方針や取り扱う商品ごとの全社的な営業に関する計画を策定する業務
⑧ 生産に関する企画を担当する部署における楽
務のうち、生産効率や原材料等に係る市場の動向等について調査及び分析を行い、原材料等の制
達計画も含め全社的な生産計画を策定する業務
1.対象業務とならない例
① 経営に関する会議の庶務等の業務
②人事記録の作成及び保徴、給与の計算及び支払、各種保険の加入及び脱退、採用・研修の実施等の業務
③ 金銭の出納、財務諸表・会計帳簿の作成及び保管、租税の中告及び約付、予算・決算に係る計算等の業務
④ 広報誌の原稿の校正等の業務
⑤ 個別の営業活動の業務
⑥ 個別の製造等の作業、物品の買い付け等の業務
必ず注意しなければならない事
1.労働時間の把握が必要
企画業務型裁量労働制をしていても労働時間の管理が必要です。理由は以下に記載します
・「深夜労働」と「休日労働」の割増賃金を支払う必要がある
裁量労働制=残業代不要 という考えは間違っており、深夜勤務の割増賃金と休日労働の割増賃金の支払い義務があります。よって必然的に労働時間の把握が必要なのです。
・労働安全衛生法により「労働者の健康・福祉を確保するための措置」が定められている
ほかにも労働安全衛生法(第二十条-第三十六条)により、「労働者の健康・福祉を確保するための措置」が定められており、36協定に定められた限度時間を超えて労働させる労働者に対して、健康診断・代休の取得の実施等をしなければなりません。よって労働時間の把握が必要なのです。
参考URL:厚生労働省 裁量労働制の概要
参考URL:厚生労働省 労働者と健康確保と健康保持増進のために
参考URL:36協定における時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針
企画業務型裁量労働制の導入手続き
1.導入可能な事業場か、対象業務が存在するかを確認
まずは御社が企画業務型裁量労働制の対象であるか、対象業務・対象者は誰かを正確に把握します。
2.労使委員会を設置する
労使委員会を設立します。労使委員会はそれぞれの対象事業場において、労働者の過半数で組織する労働組合、または過半数を代表する者に、任期を定めて指名します。
また、その労使委員会では必ず議事録が作成・保管され、従業員への周知が行われることが必要です。
3.労使委員会での決議
【決議の要件】
委員の5分の4以上の多数決
【必要的決議事項】
① 対象業務
② 対象労働者の範囲
③ みなし労働時間:1日あたりの時間数
④ 対象労働者の健康・福祉確保の措置:具体的措置とその措置を実施する旨
⑤ 対象労働者の苦情処理の措置:具体的措置とその措置を実施する旨
⑥ 労働者の同意を得なければならない旨及びその手続、不同意労働者に不利益な取扱いをしてはならない旨
2.所轄労働基準監督署への届け出
企画業務型裁量労働制に関する決議が出来たら、議事録等を作成し所轄の労働基準監督署に提出を行います
3.本人の同意を得る
この裁量労働制は、全体の決議だけでは足りず、本人にそれぞれ同意を得ることが必要です。
3.制度の実施(6か月間)
制度の実施期間は、決議した日から6か月間です。期限が来たら再度手続きを行います。
導入するなら専門家に依頼するのがおすすめ
企画業務型裁量労働制を導入している企業の多くが、違法な運営をしている場合が多いです。弊社シモムラパートナーズでは違法にならない代替案も含め、専門の担当者が適切な導入手続きをサポート致します!
まとめ
企画業務型裁量労働制は、戦略的思考や企画力を要する業務において、従業員の自主性と創造性を高めることを目的としています。しかし、導入・運用には、法令遵守、労働者の健康管理、公正な評価制度の確立が不可欠です。適切に管理された環境下で、この制度は企業の革新性を促進し、労働者の職業満足度を高める可能性を秘めています。
この記事の監修者
特定社会保険労務士 下村 圭祐
社労士法人シモムラパートナーズ代表
社会保険労務士法人シモムラパートナーズでは、企業の個別のニーズに応じた就業規則の作成支援を行っています。労働時間制度の導入や改善をご検討の際は、ぜひ私たちの専門知識と経験をご活用ください。最適な労働環境の構築をサポートし、企業の成長と従業員の満足度向上を共に目指しましょう。
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